2011.6.7

ニューヨークでの不動産投資

先日マンハッタンを中心に30年以上投資物件としての不動産を扱っている不動産エージェントの方と話す機会がありました。不動産投資の生き字引ともいえる彼は、数え切れない程の物件を日本人投資家に対しても販売してきたわけですが、やはりSeptember 11とリーマンショックによる経済と人心の変化はニューヨークの不動産投資にも大きな影響を与えているということでした。

現在のマンハッタン景気を下支えしているのはウォールストリートに代表される富裕層購入者が不動産マーケットに戻ってきたことが大きいわけですが、例えばこれまでウォールストリート景気と完全に連動していたハンプトンズ(The Hamptons) のセカンドハウスマーケットはほとんど動きがないことからも、景気と消費者購買行動の関連性に変化が出てきていることがうかがえます。

また米国全体がまだ様子うかがい的な状況にある中、キャピタル・ゲイン狙いの投資というのは成り立ちづらい局面がつづくと考えられ、「3年で倍になった」「5年で十倍になった」・・・などというおいしい話は、少なくとも現在のニューヨークでは過去の話として語られています。

ではニューヨークでの不動産投資というのは成り立たないのかといえば、そんなことはなく、現に底値とも言えるニューヨークの不動産にたいしては多くの投資家が触手を伸ばしています。

底値とも言えるニューヨークの不動産に対し、長期投資とインカム・ゲインを目的とした投資家が活発に物件探しをしており、実際ボクのところにも最近インターナショナル・インベスターからの問い合わせが数件ありました。ニューヨークを自分のポートフォリオにいれるには好機という見方です。

問題はインターナショナルカスタマー向けのファイナンシングが以前と比べ圧倒的に少ないということ。ポートフォリオ・レンダーまで当たったことはありませんが、ボクの知る限りでは皆無であり、よっぽどレンダーに対して強いコネクションがないかぎり非常に厳しい状況です。

ですのでキャッシュ・バイヤーが多いというのはその当然の帰結。ただ大型の物件をキャッシュで購入できるインベスターというのは限られていますので、自然と物件規模は小さめ、CAPを若干犠牲にしてでも安全性を重視した投資を考えている方が多いように思います。

ところで冒頭の投資家専門の不動産エージェント、今では全くクライアントをとらないそうで・・・よく聞いたら「気がついたら、マンハッタン、ブルックリン、ウェストチェスターを合計して20ユニット以上を所有するインベスターになっていた」との話し。

しかしどの物件も10年以上前に購入しており・・・羨ましい限りです。

売るときには声かけるよ・・・別れ際にニヤッと笑いながらそう言う彼の目は、確かにエージェントではなく、何か眼光の鋭い投資家のそれのような気がしました。