全額現金で買えば、今すぐ住めますか?
朝夕はかなり冷え込むようになってきましたが、乾いた秋の風と日中の日差しが何とも気持ちのよいニューヨークです。
不動産マーケットはレンタル・売買ともに秋のラッシュとも言うべき盛り上がりを見せており、何かとニュースの多いブルックリンです。
さてそんな中、先日お会いした新しいクライアントの方から、
「全額現金で支払った場合には、今すぐにでも入居することは可能でしょうか?」
とご質問を受けました。
全額現金で不動産を購入するというのは、モーゲージ(住宅ローン)を使う場合と比べるとプロセスはシンプルであり時間もかかりません。
実際これまで物件にオファーを入れてから10日ほどで購入が完了、その数日後には入居されたという例もあります。
ただし全額現金で購入した場合でもいくつかの要素によっては「すぐに」とは行きませんので注意が必要です。以下にその例を挙げてみたいと思います。
セラー(売り手)が直ぐに出て行けない場合
例えばセラーが次に住む家を購入するプロセスにある場合などがこの典型的な例ですが、この場合クロージング(購入の清算と権利譲渡)自体をセラーの退去後に遅らせる方法や、クロージングは行ってしまい物件の権利が譲渡された後に、新しい物件のオーナーが元のセラーに対して物件を賃貸するかたちをとる方法などがあります。
何れにしてもいつクロージングできるかは、セラーとバイヤーの話し合いによりスケジュールされることになります。
テナントが居住している場合
事前にわかることではありますが、セラーがテナントに物件を貸し出していた場合、そのテナントのリース契約が切れるまで入居は出来ません。投資物件としてテナント付で購入する場合には問題ありませんが、自身が入居を予定している場合には、テナント退去後にであらためて物件を確認した上でクロージングとなります。
購入資金の現金化に時間がかかる場合
全額現金で物件を購入する場合には、手元に現金を予め用意しておくことが大前提となります。
具体的には購入希望物件にオファーを入れる段階で、クロージングコストを含めた購入費用全額が、米国の銀行口座に直ぐに引き出せるかたちである、ということを意味します。
ですので例えば株や債権を売却して購入資金とする場合や、他の家を売却して得たお金を購入資金に充てようとしている場合、また資金が日本などの海外口座にある場合などにはそのプロセス如何によってはクロージングまでに時間に影響が出てくるだけではなく、最悪契約が壊れる可能性もありますので注意が必要です。
特に日本からの購入などの場合には、米国内に資金を移した上で物件探しを始めることが非常に重要です。
コープの場合
コンドミニアムやタウンハウスと異なり、コープを購入する場合にはコープボードの承認を受ける必要があります。
この承認プロセスは、ボードパッケージと呼ばれる書類を作成し提出することやボードメンバーからのインタビュー(面接)をクリアすることなどが含まれ、非常に時間を要します。
また、その後ボードは物件の購入を認めるかどうかの決議をするわけですが、この決議のためのミーティングスケジュールはコープにより様々であり、タイミングを逃すと非常に時間がかかるので、何らかの理由で入居したい日程が予め決まっている場合には注意が必要です。
また最悪の場合には、コープから購入を拒否される可能性もあり、その場合は物件探しを一からやり直すこととなってしまいます。
ニューデベロップメントを購入する場合
新築物件でデベロッパー(スポンサー)から直接物件を購入する場合には例え現金で購入して直ぐにクロージングが出来た場合でも直ぐに入居が出来ない場合があります。
最も多いのが、居住許可証明であるCertificate of Occupancy が得られていない場合。残念ながらこれが取得されるまで入居することはできません。
またその他にもスポンサー側の様々な事情により入居可能日が遅れることはよくあります。
物件の修復や修繕が必要な場合
セラーが物件引渡し前に行わなければならない修復や、購入者が行う修繕・リノベーションなどに時間がかかる場合には直ぐに入居することが出来ません。
特に米国のホリデーシーズンには世の中全体がスローになりますので注意する必要があります。