キャッシュがそんなに偉いのか?
月曜日の今日はあいにくの雨でしたが、週末はとても天気がよく、プロスペクトパーク近くのボタニックガーデンでは桜祭りも開催されました。
さて、春の不動産商戦真っ盛りのニューヨークですが、このところ多くの方から「ダウンペイメント(頭金)はどれくらいがいいの?」というご質問を受けます。
住宅市場の好況を受け、90%ローンや100%ローンなど、小額もしくはダウンペイメント無しでも融資するようなローンも出てきているのですが、ご質問の多くは「20%以上にしたほうがいいですか?」という主旨です。
実は質問の背景に共通するのは、20%のダウンペイメントでは買えないといわれた。あるいはこれまで何度もオファーを入れたのに全て他のオファーに負けてしまった・・・という状況です。
人気がある物件つまり多くの人が購入したいと思っている物件には複数の入札(オファー)が入ることが多く、この複数入札の状況(Bidding War)に勝つためにはダウンペイメントのパーセンテージも関係するのか?という疑問が背景にあるわけです。
ダウンペイメントのパーセンテージが入札の勝敗に関係するかということで言えば、答えはイエスというより、むしろセラーはバイヤーから入札された金額の高低もさることながら、バイヤーがどの程度のダウンペイメントをおくのかということを非常に重要な判断材料にします。
何故かと言えば、ローンを利用する際、一般的に銀行は自分達で査定した物件の価値(Appraisal Value)の80%までしか融資をしないからであり、その査定金額が実際の取引金額(Market Value)より低かった場合、20%しかダウンペイメントをおけないバイヤーの場合、取引が成立しない可能性があるためです。
例えば、450Kの物件があったとします。
この物件に500K & 20%のダウンペイメントで購入するというオファーを入れたとします。この場合必要なダウンペイメントは100Kになり、400Kを銀行融資が必要です。
ところが銀行の査定価格が450Kと出た場合、銀行はこの価格の80%、つまり360Kまでしか融資をしないことになり、当初希望していた融資金額に40K(4万ドル)たりなくなってしまいます。
現在のようなセラーズマーケットでは、この差額はバイヤーが現金で用意しない限り物件の購入はできません。そして、もしそれが出来ない場合にはこのディールは成り立たなくなってしまいます。
セラー側からしてみると、オファーをアクセプトし、その後契約まで1週間ほど待ち、その後さらに査定結果が出るまで1週間ほど待ち・・・その後バイヤーは結局購入することが出来ませんでした・・・というのは最も避けたい状況となります。
ところが、例えば同じ物件に対して、490K & 50%のダウンペイメントというオファーがあったとします。
この場合には、銀行の査定価格が450Kどころか、例えば350Kであったとしても、銀行はその80%を融資するわけですから、このオファーに必要な融資額である、245K(490Kの50%)は十分に調達可能です。
現実的には査定価格がそんなに低く出ることはありませんので、セラーにとって「50%のダウンペイメント」というオファーは、ほぼ完全に低い査定により取引が成立しなくなるリスクをヘッジできるという意味になるわけです。
つまり購入金額のキャッシュの部分が厚ければ厚いほど、複数入札になった場合に勝てる見込みが高くなるというわけであり、もちろんオールキャッシュ、つまりローンを使わず全額現金で購入するというオファーが最も強いということになります。
ちなみにダウンペイメントをどの程度にしたら良いのかというのは、その物件の種類や人気度、バイヤーの方の資産・収入・負債の状況、セラーのタイプや状況などにより完全にケースバイケースとなり、実際に物件探しをする段階でバイヤーの方と綿密に計画と作戦を練って決めるということになります。