ニューヨークのタウンハウスに住む。~種類編~
さて、前回ニューヨークでタウンハウスを購入することの魅力についてお話ししましたが、実際には、一体どのようなタウンハウスが購入可能なのでしょうか?今回はニューヨークで購入することができるタウンハウスの種類について、「年代」、「建材」、「世帯数」という3つの視点から見ていきたいと思います。
年代による分類
まず最初に考えたいのは築年数です。日本では考えられない話ですが、マップにあるように、ニューヨークに建っているビルディングはその殆どが戦前の建物です(地図の中で青紫になっている部分)そして、タウンハウスやコンドミニアムについて言えば、戦前に建てられた建物は、アンティークビルディングとても人気があります。
タウンハウスを年代で大雑把に分類すると、①戦前に建てられたPre-war タウンハウス、②ニューデベロップメントとして建てられた新築・築浅のタウンハウス、そして、③戦後、住宅難により建てられたタイプのタウンハウス、に大別されます。
この中で最も魅力的で人気があるのが、Pre-warタウンハウスであり、ニューヨークタウンハウスの象徴ともいえる物件になります。Pre-war タウンハウスを新しく作ることはできませんので、現存するものがその全てということになります。
そして、タウンハウスの中は、オリジナルディテールを残しているものも、インテリアや設備を完全にモダンにしたものもあり、あまり手の入っていないPre-warタウンハウスを購入して、少しずつ修繕しながら、自分自身の家にしていくというのは多くのニューヨーカーが夢見るライフスタイルです。
これに対して、近年新しいタイプのタウンハウスも建築されるようになってきました。これらのタウンハウスは例えばパッシブハウステクノロジーや最新の設備を装備しているだけではなく、タウンハウス内の造りに関しても、現代のニューヨークスタイルに合わせたかたちになっており、一定の人気があります。ただし物件価格と不動産税が非常に高額であることが難点といえます。
最後の、戦後住宅難により建てられたタイプについては、量産されたタイプのものが多く、アンティークビルとしての魅力や、Pre-warタウンハウスに見られるような重厚な造りではありませんが、それを反映して自体は安いのが魅力です。
そのため、外観や造りにこだわらない場合や、全面的にリノベーションを行う場合、あるいはロケーションを優先するなどの理由がある場合には十分に検討に値します。
建材による分類
ニューヨークのタウンハウスには大きく分けてブリックとフレームの2種類があります。ブリックはレンガ造りのタウンハウス、またフレームというのは、木造建築のタウンハウスとなります。
まずレンガ造りのタウンハウスですが、前項で触れたアンティークビルディング、つまり19世紀末から20世紀の初頭に建てられたタウンハウスはほぼ全てレンガ造りのタウンハウスになります。
3匹の子豚ではありませんが、建材にレンガを使っていることにより、耐久性に優れ、台風などの強風、火事などの災害に強いのが特徴です。
外壁はすべてレンガでできており、家の中はドライウォールなどを立てることで壁を作っていますが、壁を剥がせばレンガが出てきますので、お洒落で人気のある Exposed Brick Wall(外壁のレンガを室内に剥き出しにして作った壁)を簡単に実現することができます。
建物の外観については、レンガの上から茶色い砂岩を塗ったブラウンストーンと呼ばれるタイプ、石灰岩を使用したライムストーンと呼ばれるタイプ、またレンガを積んだままの煉瓦造りの外壁などがあります。また、レンガの外壁の上からペンキでペイントしているPre-warビルディングというのもよく見かけます。
ただし、まれにアンティークビルディングでないにもかかわらず、レンガやブロックを積み上げて作ったタウンハウスやビルがありますが、これは建築コストを下げるためだけに行われているものであり注意が必要です。
美しさ耐久性を兼ね備えたレンガ造りのアンティークタウンハウスは、もともと当時の富裕層のための一軒家として作られてました。ニューヨークで最も人気の高いタイプのタウンハウスになりますが、先にも述べたとおり木造のタウンハウスと比べ価格は高いのが難点と言えます。
次に一般的にフレーム (wood-framed house)と呼ばれる木造のタウンハウスについてですが、基本的に戦後に建ったものが多く、特にベトナム戦争後の住宅難の際には多くの木造タウンハウスがつくられました。
レンガのアンティークタウンハウスのような趣はありませんが、外観を砂岩に似せた素材で塗り固める方法や、ウッドパネルなどのサイディングを行うことでデザイン性を上げることも可能ですので、レンガ造りと比べ価格が安いことは大きな魅力です。
ただし耐久性という意味では、レンガ造りと比べて火事、シロアリ、強風などに弱いことから、しっかりとしたメンテナンスが必要になります。またこの理由により保険の価格が高くなる傾向があります。
世帯数による分類
ニューヨークではそれぞれの物件に、法的に許可されている世帯数が定められています。1世帯のみの居住が許されている物件のことを1-Family もしくはSingle Family house と呼び、2世帯以上の居住が許されている家のことをマルチファミリータウンハウス、そして許可されている世帯数により2-Family、3-Family house などと呼ばれます。
また、許されている世帯数が4世帯以下の物件はシングルファミリーも含め住宅用物件に分類されますが、5世帯以上の居住が可能な物件は商業用物件に分類されるため、これらには全く異なる法律やレギュレーションが適用されます。
5世帯以上が居住可能なタウンハウスも存在しますが、住宅用ローンでは4-famiyまでの購入しかできないこともあり、通常タウンハウスといった場合には4世帯以下の物件を指すのが一般的です。
キャッシュフローを目的とした投資という意味では世帯数が多いほうが有利ですが、物件価格や売りやすさという意味では4-Family 以下のほうが有利となります。